佐那のいちご塾第1期生の村生活だより Vol.9 さくらももいちごの出荷、はじまったで

公開日 2023年12月22日

更新日 2024年02月28日

地域おこし協力隊 佐那のいちご塾1期生の中村です。

 12月も後半になり、みんな楽しい嬉しいクリスマスがそこまできていますね。佐那河内村も雪がちらつくことが多くなり、朝家の外に出ると水たまりに分厚い氷がはっていることが増えてきました。

 今朝は役場付近も早い時間帯から雪がシンシンと降り続けていました。ダウンジャケットを着て村内の移動や農作業をしていますが非常に動きにくいので、あたたかい作業着や最近流行りのヒーターベストを導入しようかと考えています。

↑役場の裏側からです。この雪雲の奥には普段、大川原高原の風車が見えています。

今シーズンの「さくらももいちご」の出荷が始まりました!

 さくらももいちごの今シーズンの出荷が始まり、もうすぐ1か月が経ちます。化粧箱の初競りは前年が16玉16万円で競り落とされたことと比較すると今年の初競りは20玉10万円値が落ち着いた印象を受けました。ただ、昨年の初競りでは化粧箱の出荷が170箱ほどあったのに対して今年は1箱と、この夏の猛暑と秋口の残暑の影響もあって実の充実が非常に遅れました。出荷量の少なさに対し、市場側も今後の動向に注意してあまり動かなかったのでは?と推察されます。

 

 しかしながら、これからが長丁場となります。高品質を保ち、出荷終了の時期まで消費者に届け続けることが大切だと考えます。また、収穫や出荷作業の合間には「玉出し」「摘花」などの作業を実施しています。

「玉出し」とはなんぞや

 「玉出し」は隆々と茂った葉にイチゴが隠れ、日光が当たらず色づきが悪くなるのを予防し、収穫の際にはイチゴが目に付きやすくするようヒモや竹串を使用してイチゴを主軸ごと前に出してくる作業です。きちんと玉出しが出来ていると、赤く色づいたイチゴがズラリと並ぶ様を見ることが出来ます。収穫効率も大幅アップですね。

「摘花」とはなんぞや

 「摘花」は文字通り「花を摘む」作業です。ほとんどのイチゴ農家のハウスでは2パターンの苗を準備しています。以前こちらhttps://www.vill.sanagochi.lg.jp/docs/2023092500010/で説明した、「株冷苗」「平地苗」です。現在収穫・出荷しているのが株冷苗の分ですので、平地苗の収穫時期を若干ずらすように調整しています。そのため、株冷苗の収穫中も頃合いを見計らって、平地苗の調整を実施しています。

「花芽分化」覚えていますか?

 花芽分化が進み、花芽が成長すると花が咲き、それが実になります。まず主軸である一番花序軸が伸長し、その先端に1つ目の一番大きな花が出来ます。一般的にはこの花を1番花や頂花といいますが、長男坊とも呼ばれていますね。花序軸の側枝から、さらに2番花、3番花と分岐し、多くなると合計30個以上の花がつきます

↑摘花していない第一花房です。咲いている花のすぐ下に次の蕾がどんどん出てきます。

 第一花房でそれだけの実をつけると株に対してのストレスが尋常ではありません。実をつけている第一花房が終わり、次の第二花房を収穫する厳冬期に向かうと、短日で日照時間が短くなり光合成が弱くなる時期になります。株の元気がなくなると「わい化」といってやせ細った葉や茎になり、草勢が低下した「成り疲れ」という状態になりやすくなります。主な原因は着果過多や寡日照といわれており、1つの花房で合計7~10個程度まで摘花しておくことで、着果過多を防ぎ、実が肥大していく過程での株へのストレスを軽減するわけです。

↑同じ花房を摘花したやつです。スッキリしましたね。

摘花でイチゴの実は大きくなるのか?

 摘花に関してはイチゴ関連で論文や研究が散見されています。僕もそれらは片っ端から読み漁りましたが、そもそも農業関連での研究って再現性等を含めて非常に難しいものなんですよね。ちなみに、摘花で実が極端に大きくなる、といったことはあまり関係ないそうです。ある論文では数%果実重量が増えた、といった内容があったり、明確な優位さは出ていない、であったり。私も以前は実を少なくして栄養を集約すれば大きくなるんだと思っていました。もちろん、大玉に適した品種や、栽培中の栄養状態が大部分を占めますが、摘花でストレスが減り、元気な株が余裕をもってイチゴを作ることが出来るから余力を用いて実をさらに充実させることが出来る、そんなイメージですかね。食べるなら大きなイチゴを口いっぱいに頬張りたいですよね!

収穫が終わった第一花房の軸を「かんざし」と呼ぶ

 イチゴを鈴なりにつけていた花序軸も、仕事が終わってしまうと無用の長物です。若いときは軸も柔軟性がありますが、老化したりキズがついていると軸が固くなり、隣のイチゴを傷つける恐れがあります。それだけでなく、かんざしは残っているだけで多くの栄養を株から吸ってしまうそうなんですね。

 もうすでに第二花房が出てきている株もあるので、そちらへの栄養分配がより重要です。かんざし取りも案外簡単で、根元の向きを確認して少しひねるとポキッ、とか、ムキッ、といった具合でとれます。あっという間にゴミ袋がいっぱいになりますよ。

化粧箱に詰めるトレーニングも実施

 出荷の際、化粧箱やパックに関してはイチゴ部会で決められている基準に則って出荷しています。化粧箱に詰められるイチゴは、16玉、20玉、24玉、28玉で現在は出荷しており、今回は部会長宅の作業場にてちょっとしたキズありの出荷出来ないイチゴを使用してトレーニングを実施しました。イチゴを扱うにも指先はソフトに。熟れていく段階では実の固さもありますが、しっかり熟れると果皮もやわらかくなり、簡単にキズができていしまいます。それを一つ一つパディ敷紙というフルーツを包む不織布でつつんでいきます。包み方にもある程度の基準があり、左上の角がスッと立っているか、包み紙がひらきすぎていないか。置き方としては全体の見栄えはどうか、などブランド高級イチゴとして流通させる以上、キチンとした仕事が必要です。

↑トレーニング1時間後の状態です。全体のバランスを整えるのも難しいですね。

 現在は大阪のみならず、一部を東京にも出荷しています。翌日店舗に並ぶ大阪と違い、東京は2~3日後とタイムラグがありますので少しでも実に傷みがあると数日でイチゴが悪いほうに変化します。検査の際にしっかりと目を光らし、良い品が出せるように目を鍛えていきたいですね。

総集編にその他の記事もあるので是非ご参照ください。

総集編 https://www.vill.sanagochi.lg.jp/docs/2023052300025/

 

お問い合わせ

佐那河内村役場 産業環境課

TEL:088-679-2115

E-Mail:sankan@sanagochi.i-tokushima.jp