自然に惹かれて生まれたジェラート店

公開日 2026年05月29日

更新日 2026年06月02日

佐那河内ジェラート 筒井匡(ただし)さん

徳島市から神山町へ続く国道438号線沿い。山あいの景色が広がる道中に、小さなジェラート店『佐那河内ジェラート』がある。近年、佐那河内村には自然豊かな環境に惹かれて店を構える人や、村外から訪れる人が少しずつ増えている。そのひとつが、徳島市新南福島で洋菓子店『クリスティーヌ』を営むパティシエ・筒井匡さんが手がける『佐那河内ジェラート』だ。なぜ佐那河内村でジェラート店を始めたのか。この場所を選んだ筒井さんに、佐那河内の魅力や出店に至った背景について聞いた。

 

山あいの村を選んだ理由

筒井さんは福岡や神戸で経験を積み、さらにフランスやベルギーでも洋菓子づくりを学んできた。およそ20年前に『クリスティーヌ』をオープンして以来、以前から挑戦してみたかったものがあったという。それが“ジェラート”。

「自然が豊かな場所にお店を作りたかったんです」。
そう話す筒井さんが目をつけたのが佐那河内村だった。徳島市内から車でアクセスしやすい一方で、山や緑に囲まれ、ゆったりとした空気が流れている。そんな環境に魅力を感じたという。まずは村役場へ電話をかけ、実際に足を運んだ。現在の店舗があるのは『地域交流拠点 新家』の隣にあった空き地。景色や空気感を見て「ここならやりたい店ができる」と感じたそうだ。
 

“作りたて”にこだわるジェラート

『佐那河内ジェラート』がオープンしたのは2021年。店の前には行列ができ、村外から訪れる人の姿も一気に増えた。

ショーケースには40種類の中から季節に合わせて9種類ほどのジェラートが並ぶ。佐那河内村産のさくらももいちごやデコポン、キウイフルーツなど季節の果物を使ったものから、ベルギーチョコレートやクリームチーズ、ナッツを使った濃厚なフレーバーまで幅広い。使用する佐那河内村産の果物は生産者さんから筒井さんへ直接声がかかり、取引をはじめたものがほとんどだ。

なかでも大切にしているのが“作りたて”で提供すること。毎朝7時頃から仕込みを始め、その日に作ったものを提供する。時間が経つことで変化してしまう口どけや風味をできるだけ損なわないためだ。

洋菓子店を営む筒井さんならではの技法もジェラートづくりの随所に生かされている。例えば[ジャンドゥーヤ]、ヘーゼルナッツとチョコレートを合わせたイタリア発祥の素材だ。ローストしたヘーゼルナッツを香りが立った状態でペーストにし、チョコレートと合わせる。さらに[小夏&ライチ]といった組み合わせにも、パティシエらしい感性が光る。

深いコクと素材の風味をしっかり感じられる、満足感のある味わい。それが『佐那河内ジェラート』の魅力でもある。
 

 

この場所でよかったと思える瞬間

普段は1日150〜200人ほどが訪れ、多い日には400人近くになることもあるという。店の軒先にはベンチが置かれており、目の前の山を眺めながらジェラートを楽しめる。隣接する『新家』にも休憩スペースがあり、家族連れや観光客が思い思いの時間を過ごしている。

佐那河内に店を開いたことについて尋ねると、筒井さんはこう話してくれた。
「外のベンチで家族連れやカップルがジェラートを食べている風景を見るたびに、ここに店を作って良かったなと思うんです。徳島市内では、なかなか見られない景色ですから」。

山の空気、季節の果物、そして作りたてのジェラート。佐那河内の自然そのものを味わうような時間が流れている。

 

今後も、佐那河内村で営まれるさまざまな店や人の取り組みを通して、この村の魅力を発信していきたい。