やさしさとたくましさで守る地域の未来

公開日 2025年07月30日

佐那河内村消防団 女性消防隊

常備消防がない佐那河内村、いざというときに消火活動や行方不明者の捜索を担うのは、村民や本村に勤務する人々で構成された消防団。その消防団で活躍しているのは男性だけではないのをご存知だろうか。尾山さん、井開さん、大仲さん、山上さん、廣畠さんら女性消防隊は、火災を未然に防ぐための広報活動や、災害時の支援活動を担っている。彼女たちが日々どんな活動を行い、どんな思いで続けているのか。その声に耳を傾けた。

“役に立ちたい”から始まった一歩

発足は2017年8月。2020年に徳島県で「全国女性消防団員活性化大会」が開催される予定だったことを受け、佐那河内村でも女性消防隊員の必要性が高まった。そんななか、声がかかったのが佐那河内に暮らす5人の女性たち。「知識も経験もなかったけれど、佐那河内村の役に立てるならやってみようと思った」と当時を振り返る隊員の笑顔には、やさしさとたくましさがにじむ。


伝える・支える、二つの柱で活動

女性消防隊の活動は、地域に寄り添う広報活動と、災害時の後方支援を中心に多彩な役割を担っている。広報活動としては、毎年春・秋・年末に消防団の広報用車両に乗り込み、火事の注意喚起をしながら地域を巡回。また佐那河内保育所では、手作りの教材を使って園児向けに防災訓練を実施している。「火災時には煙を吸い込まないよう、姿勢を低くして避難することを伝えるために、遊戯室の入り口に煙の広がりを模したテープを貼って実践を交えて教えています」と、笑顔で語る。さらに全国の女性消防隊が一堂に集い、日頃の活動や成果を紹介し合う『全国女性消防団員活性化大会』にも積極的に参加。「全国大会はアイデアの宝庫です! ほかの女性消防隊の取り組みを聞いて『佐那河内でもできるんちゃうん?』って持ち帰って、実際に取り入れたりしています」と目を輝かせる。

災害時の後方支援では、火災発生時に指示を受けて出動し、炊き出しや現場広報活動など、前線で活動する団員や地域の人々を支える。消火活動や捜索活動で長時間の任務を担う消防団員にとって欠かせないサポート役である。

実践を見据えた多彩な訓練

「できることを、少しずつ増やしていきたい」と、訓練や講習にも意欲的に取り組む。心肺蘇生法やAEDの使い方、無線機操作はもちろん、放水訓練やロープワークなどにも挑戦。救急救命士による本部機動隊の研修に、自ら働きかけて参加することもあるという。
「私たちが実際に現場で放水をすることはないのですが、やっぱり知っておくと役立つ場面があると思うんです。勉強にもなりますし」とスキルアップにも前向きだ。


地域と共に歩む女性消防隊の未来

発足から8年。5人のメンバーを中心に活動してきた女性消防隊だが、これからも継続していくためには、新しい隊員の参加が欠かせないという。「若いメンバーにも入ってもらって、どんな考えを持っているのかを知り、それを活動に取り入れていきたい。意見を出し合いながらよりよい形にしていければ」と班長の尾山さんと副班長の井開さんは語る。女性消防隊への参加は18歳以上60歳未満で、佐那河内村内に居住または勤務し、健康な人であればどなたでも可能。申し込みは村の総務課消防担当、または女性消防隊員を通じて受け付けている。

「防災の知識を身につけることで、身の回りの安全を守れるようになるし、いざというときに大切な人を助けられる力にもなります。自分のためにも、佐那河内村のためにも尽力できる活動なので、ぜひ一緒に協力してほしい」と話す。地域の安心を守る女性消防隊の活動は、これからもますます広がり、深まっていくだろう。