紡がれていく愛。安部トシエさんの幸せ溢れる日々

公開日 2025年03月12日

 

「佐那河内村に嫁いで66年」

昭和34年、隣町の勝浦町から佐那河内村へ嫁いで66年。昔ながらの知恵と現代の技術を軽やかに使いこなす安部トシエさん(86)。園瀬川と音羽川の流れる山あいの豊かな自然に囲まれた場所に、安部さんの家はあります。

 

嫁いだ当時の家は、雨漏りのする茅葺屋根だったそうです。楽天家で穏やかなご主人と二人三脚で家を直し、3人のお子さんと生活していました。子育て中はうまくいかないこともあり、子どもたちにつらい思いをさせたかもしれないと話す安部さんですが、県外に住む娘さんが毎月様子を見に帰ってくるそうで、その親子の絆の深さがうかがえます。

 

また、近所の方々との交流の中で教わったぼた餅、お赤飯、寿司、切り干し大根、沢庵などの作り方を記した当時のメモは、今でも大切に保管し、「教えてくれた方達のおかげで今がある」と感謝を込めて周囲の人々に振る舞っているそうです。食材は自宅の畑で種から育てたものが多く、愛情がたっぷり込められています。家の周りには、ビワ、文旦、梅、桜、栗、キウイ、ニッキなどの木々が植えられており、時には剪定も自分で行うほど元気いっぱいの安部さんに、健康の秘訣や日々の楽しみについて聞きました。

 

「健康の秘訣」

 

健康の秘訣は「みんなと楽しいことをして、みんなの優しさに日々感謝すること」と教えてくれました。

 

月の半分は予定で埋まっているほど活動的な安部さん。老人会の役員を務め、お花見やサーカス、天満座の観賞など、さまざまなイベントを企画しています。老人会で出会った井上ひさしさんの「なのだソング」をみんなで朗読するなど、日々励まされ、「老人会のおかげで元気に過ごせている」と話していました。

 

また、村の集まりである“ふれあい昼食会”にも参加し、村の人々との交流を深めているそうです。「老人10人に対して、村長、副村長、役場の方々など、約20人もの人が世話をしてくれる。ありがたい〜」と、その温かい支援に感謝していました。ふれあい昼食会では、おいしい食事だけでなく、健康チェックも行っており、毎月の楽しみになっているそうです。

 

毎月の医療費はほとんどかからないという安部さんは、主治医が往診を提案しても「自分で運転できるから」と断り、村内外を問わず自由に外出しています。その行動力には、驚かされるばかりです。

 

さらに驚いたのは、スマートフォンを使いこなし、スケジュール管理やLINE、Instagram、TikTokまで活用していることです。おかげで孫も気軽に連絡を取り合うことができ、ひ孫の動画や写真をうれしそうに見せてくれました。

 

「今後の楽しみ」

種は自家採取し育てることが大切だと教えてくれた安部さんは、現在、夏野菜の準備や草むしりに精を出されているそうです。7月に収穫を待つ甘夏もたわわに実っていました。

安部さんの孫は、「おばあちゃんの育てた野菜が大好き」といつも季節の野菜を楽しみにしているそうです。その孫に赤ちゃんが生まれ、4月には佐那河内村の自宅でお食い初めをするのをとても楽しみにしています。大きくなったら、安部さんが丹精込めて育てた野菜や果物をみんなで囲む姿が思い浮かびますね。

決して裕福とは言えない時代を乗り越え、ご主人の楽観的な性格に学び、周囲の人達とお野菜に愛情を注いできた安部さん。

 

終始明るい笑顔で「毎日幸せ」「今日もご先祖様に感謝した」と話してくれました。一人暮らしは寂しいと思われがちですが、安部さんの場合は、広々とした家と庭で充実した幸せな時間を過ごしているようで、話を聞いているこちらも元気をもらえました。