佐那のいちご塾第1期生の村生活だより Vol.11 おいしいイチゴとは?

公開日 2024年02月28日

地域おこし協力隊 佐那のいちご塾1期生の中村です。

 この2月はイチゴ農家にとって非常に頭を悩ませる天候が続いています。あたたかかったり、寒かったり、急に暑くなったり。実の充実が少しおかしなかたちで進んでいます。

イチゴの実は実は?

 イチゴは花の段階でミツバチがしっかり仕事をしてくれていると受粉し、実ができていきます。


 はじめは黄緑色の花托ですね。ちなみにイチゴの実というのは本当はツブツブの種のような部分であって、赤く色づいていくところは植物でいう茎が生長した部分になります。これを花托といいます。しかしながら、今回は統一感をもたすために呼称は実でいこうと思います。

半分に割ってみると、実際に茎と言われてもわかるかなと思います。

黄緑色の実は食べられるのか?

 この段階の実は固く、当然ながら食べられたもんじゃありません。徐々に実が膨らみ、基本的に先端からうっすら赤く色づいていきます。ただ、中には先端が青いまま成長する「先青」というイチゴが出来ます。この先青は実が成熟しても先端の色が赤くなることはありません。いくら形が良くてサイズが大きくても規格としては低くなってしまいます。化粧箱に入るのか、パックに詰めるのかでも出荷単価は大きくかわりますね。

↑サイズとしては「20玉の化粧箱」に入る大きさですが、先が色づいていないので「」の規格になります。

いつの時期のイチゴが一番おいしいの?

 これは非常によく聞かれる質問ですね。イチゴ農家の皆さんがよく仰られるのは、2番果(2番花序)が1番美味しいんちゃうか?」とのことです。シーズン当初の1番花序のイチゴも当然美味しいのですが、やはり株がまだ若く、株の強さや安定性が不十分ですね。それと違い2番花序になってくると株も落ち着き、根も充実してしっかりした実が作られるようになりますし、イチゴの生長によい気温となります。それから3番、4番、5番花序と進むにつれて株の疲労具合や気温・日光なども影響してきますので、総じて2番花序かな?ということです。

たまに、すっぱいイチゴあるよね

 先にも述べていたように、黄緑色から徐々にイチゴは色づいて赤くなっていきます。イチゴの実はできはじめは酸度が高く、非常に酸味が強い状態ですね。実の充実とともにゆっくりと糖度が増し、それと相反するように酸味がまろやかになっていきます。いったいそれはどういう状況なのでしょうか?

主な酸味はわたしたちにも必須のビタミンだった 

 イチゴの酸味の主成分はアスコルビン酸(ビタミンC)です。このアスコルビン酸は植物で葉など、緑の組織に多く含まれており、光合成が進行する葉緑体では太陽光によって活性酸素が多量に生じ、これらを速やかに除去するために抗酸化物質であるアスコルビン酸が必要となるからです。

 発生した活性酸素をすばやく除去できなければ、植物の光合成はたちまち停止してしまうそうです。それを防ぐために、植物は特に緑の組織でアスコルビン酸を多量に合成しています。イチゴの実も若い時期は緑色で光合成をしていることからアスコルビン酸を合成していると考えられています。実が赤く色づいていくと葉緑体は減少し、光合成自体は進行しなくなりますが、実の細胞が活性酸素などによって傷害を受けないようにするため、アスコルビン酸を残していると考えられているそうです。

 さすがにアスコルビン酸が活性酸素に対してどのような反応や機序を持ち、どのように働いて変化していくかはアカデミック過ぎる内容になるので今回は省略しますね。

イチゴの甘味の変化にかかる日数は

 イチゴは一般的に1~2月の冬の時期は酸味が減少し、甘味が増していきます。そして、春になって暖かくなると酸味が強くなります。これはアスコルビン酸の含量が増えるからと言われています。イチゴの糖度は色づきなどだけではなく、積算温度によって決められることが知られています。
 イチゴの収穫までの積算温度は、一般に約600℃が指標と言われています。もしハウス栽培で室温が20℃程度に保たれている状況であれば積算温度が600℃になるために約1か月かかります。もし15℃であれば、40日かかるという計算になりますね。
 つまり、温度が高いと生長や色づきが早いため、じっくりとうま味(甘味を主体とする)の成分を実に蓄積させることができず、見かけだけどんどん生長していくということになります。
 ですので、低温でじっくりと生長してくれたイチゴには、うま味の成分の蓄積も十分になされるため、甘味の強いイチゴになるというわけです。これらの条件を1番満たしてくれるのは2番花序が出荷される2月前後あたりということになりますね。

イチゴの美味しさの決め手は甘味と酸味のバランス

 ここで糖度について考えていこうと思います。イチゴは「甘い」と感じる甘味と、「酸っぱい」と感じる酸味の両方を兼ね備えているフルーツです。甘味は糖度、酸味は酸度と考えて差し支えありません。そして、全体の糖度を酸度で割った値を糖酸比といいます。糖酸比の値が高いほど甘みを強く感じますが、イチゴの品種によっても甘みの質が違うので一概には言えないのが難しいところです。

 少し乱暴に言うと、砂糖でもグラニュー糖、上白糖、三温糖、きび糖などで味も違いますよね。塩も産地や製法によって若干の味の違いがあります。

 イチゴも多品種にわたりますし、産地や農家によっても生育方法が違うので甘味や酸味が違うのは当然です。じゃあ、酸味がない甘いイチゴが美味しいんじゃないのか?そうとも限らず、イチゴは適度な酸味がないと味がボケてしまい美味しくないと言われています。
 世の中に数多あるフルーツで糖酸比が適切な値に近い状態に到達することを酸甘適和」と言うそうです。

人の味覚細胞が複雑に働いている

 舌の働きの中に、味の対比効果や抑制効果といった働きがあるのを聞いたり感じたりしたことはないでしょうか?
 対比効果の例を挙げると、スイカに塩をかけて食べると甘みを強く感じるといったことです。これは一方の感じ方を強調や増幅させる効果ですね。
 もうひとつの抑制効果というのは2種類の異なる味を混合したときに、一方または両方の味が弱められる現象を言い、例としてレモンと砂糖をくわえてはちみつレモンにすると酸味が抑えられて食べやすくなるという効果ですね。

イチゴの甘みにも好みがある

 日本のイチゴは品種は約300種と大変多く、世界全体の品種の半分以上が日本のものだという説もあるそうです。
 その数多ある品種の中でも、みなさんも好みの品種があるのではないでしょうか?有名なものでは、あまおう、とちおとめ、章姫、紅ほっぺ、さちのか、その他にもそれぞれの地域に特化したイチゴが生産されています。
 ガツンとくる甘さ上品な甘さねっとりと舌にまとわりつくような甘さスッと消える後味の軽い甘さ。冬場ではわりとしっかりした甘さを好み、春先は甘さと酸っぱさが混在しているものが好まれる傾向にあるそうです。イチゴを食す時期によって人の好みも変わるというのはおもしろいところですね。

↑これはすっきりとした甘さの「ももいちご」です。ほぼ流通していません。

軸折れとは

 この写真のように実についている軸がイチゴの重みで折れ曲がってしまっている現象を言います。

 実が大きくなる大玉タイプのイチゴでは軸の強さが足りず、垂れ下がった状態になると頻発しやすいんですね。こうなってしまうと、茎の中を通っている導管・師管の通りが悪く、栄養が十分に行き渡りません。色づきは問題なくするのですが、味がうまくのっていないイチゴになるんですね。なので、花序軸が伸びてきている段階で竹串などで実の向きを誘導するようにしています。

 2番花序以降は花序軸が徒長しやすいので、特に注意して見回りを行っています。

総集編にその他の記事もあるので是非ご参照ください。

総集編 https://www.vill.sanagochi.lg.jp/docs/2023052300025/

↑雨あがりに綺麗な虹が村にかかっていましたよ!

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