おおらかで繊細な料理人

公開日 2020年06月03日

更新日 2020年06月26日

嵯峨峡渡月 大将 藤本忠さん

 

20代前半で店を

清らかな流れの嵯峨峡。その傍らに、「嵯峨峡渡月」という懐石料理のお店がある。渡月は、開店から25年が経つ。大将の藤本忠さんは、20代前半で自分の店を構えた。若い時に自分の店を持つのは怖くなかったのだろうか。いや、若いからできたのかもしれない。聞くと、怖さはあったけど、故郷の佐那河内村嵯峨に、他に飲食店がなかったから、早く自分の店を持ちたかったのだそう。

 

やっぱり料理が好き

実家が仕出屋だったこともあり、料理は小さい頃からやっていた。家族の食事を作ったり、お祭りで食べたこんにゃく味噌田楽がおいしかったからと再現してみたり、川原で魚を焼いたり、楽しかった料理の思い出がいくつも出てくる。長男だから跡を継ぐという流れもあったが、やっぱり料理が好きだったから、自然と料理の世界へ進んだ。高校卒業後は、大阪の調理専門学校へ行きながら、住み込みで料理屋さんで働いた。まさに一日中料理漬けの日々を数年経て、嵯峨に帰ってきたのだ。しかも、実家をそのまま継ぐのではなく、新たに自分のお店を構えた。専門学校への進学が決まった時は、地元の方々が壮行会を開いてくれ、いざ嵯峨でお店を始める時は、大変喜んでくれた。先のことは常に考えつつも、前向きな性格で今をちょっとずつ積み重ね、「人ってじゅんぐりに山と谷がある」と流れに身を任せながら、この25年間走ってきた。おおらかで繊細な性格の藤本さんの手から作り出される料理は、やはりおおらかで繊細だ。ぜひ一度、味わってみてほしい。

 

※奥様の弥生さん。25年前の開店当時から二人三脚で渡月を切り盛りしている。

 

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